妊娠中も子育て中も!登山を通じて広がる世界
ママになっても「自分自身も大切にしてほしい」――
そんな想いを掲げるネオママイズムが、さまざまなママの姿をお届けするneomamaismインタビューブログ。
Vol.11となる今回は、登山に情熱を注ぐ、アウトドア/山岳ライターのマリベ(寺井真理)様がゲストです。
マリベ様は、現在8歳と4歳のふたりの子育てをしながら、親子で山へ行く喜び、魅力などをSNSやメディアで発信されています。
妊娠、出産、子育てといったそれぞれのステージに合わせ、大好きな登山を諦めずに続けてきたからこその登山観の移り変わり、そして現在楽しまれている親子登山の醍醐味などを伺いました。
登山と出会い、地元へUターン
――これまでのご経歴と、登山を始められた経緯を教えてください。
生まれも育ちも名古屋で、大学院まで建築を勉強していました。建築関係に就職することも考えたのですが、知人に「この会社が合うんじゃない?」と勧められた株式会社ベネッセコーポレーションから内定をいただけて。就職を機に上京し、子ども向け通信教育講座の教材を作っていました。
私はもともとアウトドアは好きでしたが、本格的な登山は大人になってからですね。屋久島に遊びに行く際に、山に登ることになって。
そのとき上下セパレートのレインウェアや登山靴といった基本的なギアを揃えました。当時は“山ガール”という言葉もなかったので、若い女性は山では少なかった記憶があります。
――それからは、おひとりで活動されたのですか?
いえ、会社の同期のワンゲル部、登山部出身の男の子と一緒に「仕事のストレス発散もかねて休日に山に行こう!」という流れになったんです。
私以外のふたりは登山経験者なので初回からハードでしたが(笑)、何回か登っているうちに楽しくてどんどんのめり込んじゃって!
山で出会ったおじさまに、「すべての山歩きの技術は沢登りにある。東京都山岳連盟が開いている登山学校に行って基礎から学びなさい」と言われたのを真に受けて講習に行き、山岳会にも入りました。
15名程度受講者がいるなかで、女性は私ひとり。実技は岩や滝を登って、みっちりやりました。
※山岳会:山好きが集まる会。全国に多数存在する。
――フリーランスになられたのはどういった経緯で?
5〜6年ベネッセにいましたが、結婚を機に子育てなど今後のことを考えて退職し、私の実家がある愛知にUターンしたんです。
これは夫が言い出したことで、確かに2人とも東京にこだわる理由はなかったのです。
退職後もフリーランスとしてベネッセからお仕事をいただけるようになり、ふと、フリーランスなら山の雑誌にも携わってみたいなと思って、えいやと山岳雑誌に売り込みに行きました。
当時は登山経験も浅く、一般誌の経験もなかったですが、やる気のある若い人ということで受け入れてもらえたように思います。
不妊治療を経て妊娠。マタニティ登山に挑戦
――そうしてお仕事が軌道に乗ったタイミングで妊娠されて。不妊治療をされていたそうですが、当時のことを教えてください。
不妊治療を経て、妊娠するまでに2年半かかりました。
本当はもっと早く授かりたかったのですけど、毎月生理がきてがっかり、みたいな…幸いフリーランスなので不妊治療の病院には通いやすかったものの、精神的にきましたね。
カフェインやお酒をやめたり、温活をしたり、迷信かもしれないと思いつつ色々やりました。
――お辛い時期だったと思いますが、その時期の支えになったものは何だったのでしょう?
おっしゃる通り妊活中は先が見えなくて辛かったんですが、逆にいうと妊娠するまでの2年半は自分の行きたい山に登れたんですよ。年間50日以上登りました。
名古屋の山岳会に入り直して、会の人といろんな山に行けたので、その時期は、自分に力がつくのを実感できました。
去年までは先輩にロープを出してもらった場所で、今年は自力で登れたとか。
山って、成長が顕著に分かるのです。
あの時すぐに妊娠していたら、こういった登山経験は積めませんでした。
――妊娠して、体調の変化はありましたか?
最初の妊娠ではつわりがひどくて、2ヶ月ぐらい何もできませんでした。ベッドで寝て、吐いて、100m先のスーパーにも行けないみたいな。
仕事も減らさねばならず、山をテーマにした長編小説やノンフィクションを読んで気分転換しました。
やっと落ち着いた頃に、リハビリとして、1時間くらいで登れる山に行ったのが、妊娠中の最初の登山です。
マタニティハイクは人生で今しかできないという思いで、それからは「月に1回、低くてもいいから“山”がつく場所に行く!」って決めて足を運びました。
※妊娠中に登山される場合は、必要に応じて主治医にご相談するなどし、お腹の赤ちゃんとママの身体の健康を第一にお考えのうえ行ってください。
――妊娠中はふだんの身体の状態とは違いますから、安全への配慮も欠かせないと思います。マリベ様の考えや、役に立ったアイテムがあれば教えてください。
まずパートナーの同意を得たうえで、妊娠前にしていた登山とはまったく別物として山を捉えて、登るとよいと思います。パートナーの意見もあると思いますが、私の場合は夫が「救急車も来られないところに」と心配したので、山深いようなところには行かず、街から近い、いつでも下山できる里山を中心にハイキングを楽しみました。もちろんスマホの電波も入ります!
なかには大きな山に登れてしまう山好きの妊婦さんもいますが、私は標高300mくらいの、頑張る必要のない低山で、マイペースかつリラックスした気持ちでお腹の赤ちゃんのことを考えながら歩いていました
アイテムは、お腹が膨らんで足元が見づらくなることと、転倒をなんとしても避けるために、トレッキングポールを使いました。
一度も使ったことがないとむしろ歩きにくい!と感じるかもしれませんが、産後の登山でも有用なので徐々に取り入れて慣れてほしいと思います。
あとは下半身を安定させる骨盤ベルト!そして私は尿漏れに悩んだので、吸水パッドを使うことで安心できました。
初めての出産。第一子は生後4ヶ月で山デビュー
――出産や、産後の回復は、いかがでしたか?
第一子のときは、山に行かない日も家のまわりを4〜5km歩いていました。一概にそのおかげとはいえませんが、問題なく自然分娩ができ、産後の回復も順調だったと思います。
骨盤ベルトは産後1年半くらい使いました。産後は特に腰が痛くて、骨盤ベルトはお金を惜しまず何種類か試しました。
骨盤矯正にも10回ほど行きましたが、私は効果を感じにくく、着脱が多少面倒でも骨盤ベルトの方が、実感としては効果があった気がしますね。
――産後、お子さんと一緒に山に登る習慣ができたそうですね。最初の登山はいかがでしたか?
一人目の子は真冬に出産したので、春になったタイミングの生後4ヶ月で山デビューとなりました。妊婦のときと同様に、行き交う人も多いローカルな里山をチョイスして、夫婦で交代して抱っこ紐で前に抱えて歩きました。
大声で泣かれてしまったり、登山中の授乳を課題に感じたりと、大変なことはありましたが、産後のリフレッシュにとてもよかったことを覚えています。
それからは月に一度の子連れ登山を自分のテーマにしました。
私よりも夫のほうが慎重で、夫の意見を聞きながら、少しずつ行動範囲を広げました。
――登る山は、どのように決めているのでしょう?ポイントがあれば教えてください。
私自身、どんな山がいいのかまったくわかりませんでした(笑)。妊娠前は遠方の、難しくて高い山にばかり登っていたので…。小さな山のハイキングコースでも、できれば“いい山”に登りたいですよね。
おもにネット検索で山の見当をつけてから、「ヤマレコ」や「YAMAP」で具体的な山行記録を読んで調べていましたが。
※「ヤマレコ」「YAMAP」:地図アプリ。登山の記録共有や、道迷いを防ぐ機能も備わっている。
あるとき、登山観を広げられた瞬間があったんです。
友人のFacebookから知った山でしたが、春に子どもを連れて標高100mそこそこの古墳でできた山に行ったら、山頂は見事な一面の桜で、とてもよくて!山は高くなくてもいい、どの山にも必ずいいところがあると気づきました。
季節に合わせて花や紅葉を楽しんでもいいし、冬は空気が澄むので低山でも展望が期待できます。
妊娠中も産後も、SNSで北アルプスとか大きな山に登っている方を見てうらやましかったのですが、子どもがいるからこそ小さな山の魅力に気付けたんだと、ポジティブに思うようになりました。
100人100とおりの親子登山。心構えやポイント
――親子登山をする際の心構えを教えてください。
3つあります。
1つ目は、どんな登山のベテランでも我が子と一緒に行く登山は初心者だということです。似たことを著名な探検家も言っています!子育てと同じで、親も初めてのことなんです。
2つ目は、登頂にこだわらないこと。これが難しいのですが、すぐそこが山頂でも、子どもがこれ以上歩きたくないと言っているときは気持ちを切り替えて断念する。
励まして登頂することが子どもの達成感につながる場合もありますが、楽しい思い出で終えることで、また山に来たいと思ってくれるかもしれません。
3つ目は、何事もスモールステップで進めていくのが安心だということ。山での足運びもそうなのですが、とくに山選びで気にしてほしいです。
たとえば山の気象や標高は、平地で想像するよりもずっと特殊で、行ってみたら強風で凍えるほど寒かったとか、観光地だと思っていたけど標高がとても高かったなど、子どもにとって「大丈夫かな?」と判断に迷う場面がいろいろ出てきます。
子どもは自分の体調をうまく表現できないので、不安ならやめる、状況が悪いときはすぐ下山できる山にするなど、控えめな計画で、ステップを重ねていくのがいいです。
こうした判断には、子どもが100人いたら100通りの答えがあるので、親子登山には教科書がないと思っています。100人100通りの親子登山を楽しんでほしいです。
山頂には行かずに花や展望を楽しんだ、長野県の飯盛山
――装備の面でも、アドバイスがあれば教えてください。
登山専用のキャリアもありますが、0歳のうちは抱っこ紐を活用できます。後ろでおんぶしたほうが歩きやすいので、おんぶしやすい抱っこ紐を最初から購入できるといいですね。
親に関して一つ伝えたいのは、どんな里山でどんな短時間でも、親はちゃんと登山に適した靴と靴下を履くこと。
重厚な登山靴を履く必要はなくて、滑りにくいソールで足にきっちり合った山用のシューズを履いてください。
身近な山や森でも、思った以上に歩きにくい場所が出てくるのは里山あるあるで、そういうシーンで子どもを抱っこするなど、パーフェクトに子どものお世話をしようとすると、経験上とくに靴は性能の差を感じます。
子どもを守ることにつながるので、親の装備はちゃんとするのが大事です。
――子どもと一緒に登るからこそ得る喜びも、大きいものですよね。マリベさんは、どんな瞬間に喜びを感じますか?
親子登山をしているとはっきり子どもの成長が分かる瞬間があるんですよ。
娘が2歳9か月のとき、ふたりで標高差50m、片道1kmの山に行きました。それまでずっと背負って登山をしていましたが、その日は「自分で頑張って歩こうね」って言って。
でもやっぱり途中で何回か座り込んで動かなくなってしまって、「お母さん嫌い。お父さんがよかった」なんて言うんです(苦笑)。
そういうことがありながらも、「あそこまで歩いたら休憩しよう」などと全力で励まして、自分の力で登頂できました。
娘の初めての自力登山だったのですごく感動しました。
娘も、お母さんはやたら褒めてくれて、山頂から海や船が見えて景色もいいし、達成感があったと思います。
あと、山で撮った写真を見返すことでも子どもの成長を感じます。記録を残すことはやっぱり思い出になりますし、親子登山の楽しみの1つじゃないでしょうか。
――お子さまが山に興味を持つために、誘い方や声掛けの仕方も重要だと思います。どのように誘われていますか?
よく言われるのは、ご褒美を用意することですね。たとえば、牧場がある山では動物が見られるよとか、山頂にレストランがあるなら山の上でかき氷食べようねとか。
電車が好きな息子には、山の上から電車を見ようと誘うと喜びます。
よく登っている金華山は、山頂にリス村があるので、子どもたちはリスさんの山と呼んで親しんでいます。
それと、我が家の場合は山でお弁当を食べることがとても楽しみなようです。
――最後に、読者へメッセージをお願いします。
これまで親子登山の魅力を話してきましたが、自分のための登山も大切にしてほしいと伝えたいですね。
自分がやりたい登山もして、子どもとの登山も楽しむこと。
私は産後2年経った頃に、子どもは預けて、産後初めて泊まりがけで山に行きました。やっぱりそういう時間って、大切なんです。
日常は子育て一色ですが、山には変わらない山の時間が流れていて、またここに戻ってきたいなと思いました。
そのためにはパートナーやまわりの協力も欠かせませんので、コミュニケーションをとっていくことが重要だと思います。
自分の登山をするために、山が好きなママ友を作るのもおすすめです。私はInstagramで、近い地域のママと交流してお茶や公園遊びをしながら仲良くなっていきました。
そのうちに子連れで山に行ってもいいし、時にはお互いパパに預けてママだけ登山ができれば素敵です。
妊娠・出産・育児は孤独を感じやすいので、共通の趣味をもつママ友の存在にはたくさん勇気づけられてきました。
ママ同士で挑戦した1泊2日の北アルプス、槍ヶ岳登山
マリベ様の役に立ったオススメグッズ
アウトドアメーカーのモンベルのもので、山や日常でもよく着ました。
私が買ったのは90で、1歳から3歳まで3シーズン着られました。化繊なので洗濯可能。フードは取り外せます。
引用:montbell
登山靴を買う前は、普段履きのスニーカーで山歩きをさせていたので、ソールが滑りにくいものを選んでいました。この靴はベルクロを開けたままにできて脱ぎ履きしやすいところが気に入っていました。
マリベ/寺井真理様 Instagram
https://www.instagram.com/terastudio.maribe/
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