neomamaism Mag

「一番やりたいことに集中してきた」15年の主婦期間を経て挑戦した「絵本作家」の夢

LINEで送る
Pocket

 

ママになっても「自分自身も大切にしてほしい」――

 

そんな想いを掲げるネオママイズムが、さまざまなママの姿をお届けするneomamaismインタビューブログ。

 

Vol.24となる今回は、2022年に絵本作家としてデビューした玉田美知子さんがゲストです。

 

中学2年生の頃から「絵本作家」に憧れを抱いていた玉田さんでしたが、結婚、出産後は主婦として子育てに専念。子どもが成長し、親の手から離れてきたタイミングで、絵本作家への夢を実現するために行動に移したそうです。

 

自身のことを「一つのことに集中したい性格」と話す玉田さん。絵本作家になってからは、家事をパートナーと分担し、絵本づくりに全力投球する日々を送っています。育児、家事、仕事…その時々で「集中したいこと」に向き合いながら人生を歩む玉田さんに、夢を実現するまでの道のりや子育てのエピソードを伺いました。

 

 

「子どもが大きくなるまでは…」専業主婦として育児に向き合うことを決断

 

――現在絵本作家として活躍されている玉田さんですが、本格的に絵本を描き始めたのは「子育てが落ち着いてから」だと伺っています。まずは、これまでのご経歴を教えてください。

 

子どもの頃から絵本や漫画など、「絵にまつわるもの」が大好きで、中学2年生の頃には「絵本作家になりたい」と考えるようになっていました。高校2年生から美術予備校に通い、多摩美術大学に進学。入学してからは、意欲的に絵を描いていたのですが、友人に誘われて始めたバンド活動に夢中になるあまり、「絵本作家」の夢が遠のいてしまいました。

 

卒業後はデザイン会社に就職しましたが、会社員生活が性に合わず、数カ月で退職。その後は、CDショップでのアルバイトで生活費を稼ぎ、趣味のバンド活動を楽しむ日々を送っていました。

 

結婚したのは25歳の時。その翌年に娘を出産し、絵本と触れる機会が増えたことで、「やっぱり絵本っていいな。絵本を描いてみたいな」と改めて考えるようになりました。でも、当時は育児や家事に追われて、「夢を追う」という余裕はほとんどなくて…。

 

 

――その頃は、絵を描いたり、絵本を作ったりはしていなかったのですか?

 

子どもの寝かしつけをした後で、絵を描くことはありましたが、本腰を入れて「作品を作ろう」という感じではありませんでした。

 

世の中には、育児をしながら夢を追いかけたり、育児と仕事を上手に両立したりしている方がたくさんいます。でも、私には育児と何かを両立させることは難しくて…。そこで、「子どもが大きくなるまでは育児に集中しよう」と考え、専業主婦として子どもと向き合うことにしたんです。

 

――絵本作家を目指そうと思い立ったきっかけはあったのでしょうか。

 

娘が15歳で高校に入学する頃、ママ友に「子どもが大きくなると寂しくなるから、趣味を持っていた方がいいよ」と言われたことがきっかけでした。

 

それまでは地域や学校の役員活動など、育児や家事以外の「役割」がありました。しかし、娘が高校生になった途端、学校関係の活動がほとんどなくなり「自分の時間がたくさんある」ということに気づいたんです。そこで、「絵本を描いてみようかな」という考えが芽生えて…。

 

――その後は、独学ではなく絵本教室に通いながら学ばれたそうですね。

 

私は怠け者な性格なので、自分を追い込むためにも、課題提出がある教室に通おうと決めたんです。当時の私は41歳。体力面に不安はありましたが、自宅のある神奈川県大磯から東京の絵本教室まで毎週日曜日に通い、約8カ月間の工程で絵本の作り方を学びました。

 

大変ではありましたが、15年間を子育てに集中してきたからこそ、「絵本作家になる」というスイッチに切り替えて、無我夢中で努力できたのかもしれません。

 

 

――玉田さんの決断に、ご家族はどのような反応でしたか?

 

夫も娘も、「絵本作家になるために勉強をする」と話すと、「頑張って!」と応援してくれましたし、デビューが決まったときは「すごい!おめでとう!」と喜んでくれました。

 

夫は自宅で仕事をしているので、制作が佳境のときは、買い物や料理などの家事を夫が担当してくれて、私が絵本作りに集中できる体制を作ってくれています。夫も娘も絵本作家としての私をサポートしてくれていて、とても有難いと感じています。

 

 

「ブログをつけること」で、育児中の孤独と不安から脱出できた

 

――26歳のときに第一子を出産された玉田さん。当時を振り返っていただき、妊娠と出産の思い出をお聞かせください。

 

当時、私の周りには、まだ子育てをしている友達がおらず、インターネットから得られる情報もわずかだったため、不安な気持ちで過ごしていました。偶然、出産予定日が近い友達がいたので、メールや手紙で励まし合っていたことを覚えています。

 

また、私は里帰り出産を希望していたので、出産予定日の1カ月前には、地元の茨城県筑西市に帰郷。約6時間で出産できたので、スムーズなお産だったと思います。

 

分娩中、「赤ちゃんの頭が見えてきましたよ!」と助産師さんに言われたときに、咄嗟に出たのが「楽しみです!!」という言葉。その後、助産師さんから「分娩台で『楽しみ』と叫んだ人は初めて」と笑われてしまったことは、今では良い思い出になっています(笑)

 

――すごい…余裕のお産だったのですね!産後はどのように過ごしましたか?

 

産後の痛みはしばらく続いたので、1カ月は地元でのんびりと過ごし、その後は当時住んでいた東京の自宅に戻りました。その頃の夫は仕事が忙しかったため、一日中、子どもと二人きりの生活。今でいう「ワンオペ育児」という状況でした。毎日のように、娘と一緒に図書館に行って絵本を借りて、スーパーで買い物をして帰るというルーティンを繰り返していました。

 

あの頃はまだ、「ワンオペ」とか「イクメン」という言葉がなかった時代。「育児は母親一人でやるのが当たり前」と考えて、日々を過ごしていました。

 

――育児をする中で、大変さや寂しさを感じたことはありませんでしたか?

 

娘が幼稚園に入園するまでは、ママ友もできず、寂しさや孤独感を感じていました。産後、仕事に復帰して、育児と仕事の両立をしている人も多くいる中で、「私は仕事もせずに子育てだけ。ちゃんと前に進めているのかな」と不安を感じたり、「自分は何もできていない」と落ち込んだりすることも少なくありませんでした。

 

――どのように気持ちを立て直したのですか?

 

娘が生後3カ月頃に、ブログをつけてみることにしたんです。今日の出来事や、私が感じたことなどを文章にして綴ったことで、その時に感じていた心のモヤモヤや自分の状況を俯瞰することができて…。「同じことの繰り返し」に思える日常でも、文章にしてみると何かしらの小さな変化を感じることができ、「娘は成長している、私も頑張っている」と気持ちを立て直すことができたんです。

 

――ブログを書くことで気持ちの整理ができていたのですね。

 

そうですね。ブログが私を孤独感から救ってくれました。子どもが大きくなった今でも、当時の大変だったことや、楽しかったことなどの思い出を振り返ることができるので、ブログをつけていて本当によかったなと感じています。

 

 

その時々の「やりたいこと」に集中して夢を叶えた。今は娘が良きアドバイザーに

 

――子育てにおいて、大切にされていることを教えてください。

 

「子どもの考えを尊重すること」を意識していました。今も昔も、親として「こうするのはどう?」と提案はしますが、決めるのは子どもに任せています。

 

時には、「今年の目標」を娘と一緒に決めることもあり、ある年は、相田みつをさんの「しあわせはいつも自分の心が決める」という言葉を書き初めで書いて、部屋に飾っていたこともありました。

 

――「しあわせはいつも自分の心が決める」。まさに玉田さんの人生を表現しているような言葉ですね。

 

その時々で「やりたいこと」に集中してきた結果、今の私がいます。娘が小学校に入学するときに、定住先を探して神奈川県大磯に引っ越したのですが、山の方に家を買ったため、買い物に行くのも少し大変でそんな生活も、娘と一緒に、身の回りにあるものを使ってものづくりを楽しんだり、コーヒー豆を買いに行く手間を惜しんで、自宅で焙煎するようになったり、工夫をしながら楽しむことができています。

 

 

――絵本を作っている過程で、「子育て経験が活かされている」と感じたことはありますか?

 

娘が幼い頃、毎日のように絵本を読み聞かせしていたのですが、娘はイラストの細かいところにまで興味を持って目を向けていて…。「子どもって隅々まで見ているんだな」という気づきが、現在の「何回読み返しても、新しい発見があるような絵本を作りたい」という意欲に繋がっています。

 

――現在は、娘さんから絵本づくりへのアドバイスをもらうこともあるのでしょうか。

 

娘は今や、私の頼もしいアドバイザーです。制作に没頭すると、客観的な視点を失ってしまい、迷うことが多くなりますが、娘が「こうした方が面白い」など、「一読者」としての意見をくれるので助かっています。

 

――今後の展望や、新しくチャレンジしたいことを教えてください。

 

子どもたちに楽しんでもらえる絵本を、一冊ずつ心を込めて制作し、お届けしたいです。今は、運動をまったくしていませんが、絵本を描き続ける体力をつけるためにも、運動も始めたいと思っています。

 

また、現在、夫と一緒に「タビタビコーヒー」という コーヒー豆のサブスクサービスも運営しているので、コーヒーの知識も深めていきたいですね。いつか、コーヒー豆の産地巡りもしてみたいと思っています。

 

 

 

玉田美知子様のおすすめ絵本

 

(1)『がたん ごとん がたん ごとん』

https://www.fukuinkan.co.jp/book?id=170

 

娘が赤ちゃんの頃、膝の上に乗せて「がたんごとん」と揺らしながら、読み聞かせをしていました。

 

(2)『どうぶつしんぶん』

https://www.fukuinkan.co.jp/book?id=6948

 

たくさんの動物たちが登場するイラストいっぱいの新聞です。娘が文字を読めるようになると、よく1人で読んでいました。

 

 

玉田美知子様の役に立ったおすすめグッズ

 

(1)ベビージョガー「3輪のベビーカー」

https://www.babyjogger.jp/

 

私が使っていたデザインは、現在は販売されていませんが、子どもが小さい頃のお散歩に大活躍していました。

 

(2)ネフ社「木のおもちゃ」

https://amzn.asia/d/il9z8pN 

 

ネフ社の木のおもちゃは、子どもが持ちやすく、色もデザインもおしゃれなので私もお気に入りでした。友人への出産祝いとして贈ることもありました。

 

 

プロフィール

 

玉田美知子

絵本作家

1977年生まれ。茨城県出身。中学生の頃から絵本作家に憧れ、大学は多摩美術大学に進学。卒業後はデザイン会社に勤務した後、CDショップでアルバイトをして過ごす。25歳で結婚、26歳で第一子を出産。2019年、子どもが高校生になったタイミングで絵本教室に通い始め、2022年に講談社絵本新人賞を受賞し、絵本作家としてデビュー。デビュー作である『ぎょうざが いなくなり さがしています』は、現在までに数々の賞を受賞している。2025年6月に続編『ぎょうざが となりに ひっこして きました』が発売予定。

https://cocreco.kodansha.co.jp/special/gyoza-i

コメントは受け付けていません。

LINEで送る
Pocket

neomamaismの公式オンラインはこちら

Online Shop Online Shop arrow_right
PAGE TOP