「ひとりで頑張らなくていい」助産師がママたちに伝えたい“頼る力”の大切さ

ママになっても「自分自身も大切にしてほしい」――
そんな想いを掲げるネオママイズムが、さまざまなママの姿をお届けするneomamaismインタビューブログ。
neomamaismが考える「ママ」とは、母であり、父であり、そしてすべての子育てをする人のこと。
Vol.38となる今回は、子育てに寄り添い、支える立場で活動する、助産師の岸畑聖月さんにお話を伺いました。
助産師として11年間、多くの親子と向き合ってきた岸畑さん。現場での気づきから株式会社With Midwifeを立ち上げ、妊娠、出産、子育てを支える新たな仕組みづくりにも力を注いでいます。「お母さんが助けを求められる社会を作りたい」。その思いの原点には、中学生のころに経験した病気や、子育ての大変さを間近で感じた体験がありました。
これまでの歩みとともに、助産師としてママたちへ伝えたいメッセージについて伺いました。
「子どもは産めない」と告げられた14歳。助産師を志した原点
――助産師として活動する一方で、会社経営にも取り組まれています。現在に至るまでの歩みを教えてください。
はい。現在は、助産師として医療現場で働きながら、育児と仕事の両立支援サービスや産前産後ケア施設の運営などを行う会社を経営しています。
助産師の道を意識し始めたのは、中学2年生のころでした。婦人科系の病気が見つかり、医師から「将来、妊娠や出産ができなくなる」と告げられ…。14歳だった私は、その言葉の重みを十分に理解できていませんでしたが、隣で話を聞いていた両親が「健康な体に産んであげられなくてごめんね」と涙を流していたことが強く印象に残っています。当時は「親を心配させないように」と明るく振る舞っていましたが、今振り返ると、この経験が助産師を目指すきっかけの一つになっていたのだと思います。

――中学時代に経験した病気がきっかけで、女性の妊娠や出産について考えるようになったということでしょうか。
そうですね。「自分が産めないのなら、産む人たちを支える立場になりたい」と考えるようになりました。
また、ちょうど同じ時期に、近所でネグレクトを受けている赤ちゃんの存在を知ったことも、私にとって大きなターニングポイントとなりました。近所の家で、「いつも赤ちゃんが泣いているな」と不思議に思っていたら、両親ともに外出しており、生まれたばかりの赤ちゃんが一人きりで家に残されていたんです。その事実を知った周囲の大人たちは、「母親が悪い」と責めていました。でも、私はその反応に違和感があって。「なぜ責めるばかりで、誰も助けようとしないんだろう」と感じたんです。
こうした経験が重なり、「赤ちゃんだけでなく、お母さんに寄り添える仕事がしたい」と考えるようになりました。
助産師として見えた現実。「病院の中だけでは限界がある」
――助産師として働く中で、どのようなことを感じましたか?
たくさんの命の誕生に立ち会う一方で、さまざまな事情を抱えた家庭にも出会いました。望まない妊娠や産後うつ、育児の孤立、虐待のリスク。「困っているのに助けを求められない人」が想像以上に多かったことも印象に残っています。
出産後、一人で育児を抱え込み、心身ともに限界を迎えている人や、仕事と育児の両立に悩み、誰にも相談できずにいる人、中には自傷行為をしてしまうほど追い詰められている人から相談を寄せられたこともありました。
病院にいる間は、サポートすることができます。でも、病院の外の生活まで支え続けることは難しい…。お母さんたちのリアルな悩みに触れるうちに、病院の外に支援を作る必要性を強く感じるようになりました。

――そこで起業という選択につながったのですね。
はい。目指したいのは「子育てにおけるナースコールを、社会に実装すること」です。
病院では、困ったらナースコールを押せば誰かが来てくれます。でも、子育て中の家庭には、その仕組みはありません。本当は助けが必要なのに、「こんなことで頼っていいのかな」と我慢してしまう人も多いと感じています。
だからこそ、「困ったときに気軽に相談できる場所を増やしたい」と考え、2019年に株式会社With Midwifeを立ち上げました。
現在は、私を含め多くの助産師が在籍しており、企業向けの両立支援サービスを展開しています。妊娠や出産、育児に関する悩みはもちろん、不妊治療や更年期、働き方の悩みなど、ライフステージに応じたさまざまな相談をオンラインで対応しています。

ママが安心して頼れる場所を。産前産後ケア施設「Jicca」という挑戦
――今年3月に、産前産後ケア施設の事業もスタートされたそうですね。どのような思いが込められているのでしょうか。
助産師として相談を受ける中で、「話を聞くだけでは解決できない悩みがある」と感じていました。例えば、「赤ちゃんは可愛いけれど、眠れないのがつらい」「ひとりで沐浴をするのが不安」「少しの時間でも、一人でゆっくり休みたい」という声です。
相談窓口で話を聞いたりアドバイスをすることはできても、実際に休息を取ったり育児をサポートしてもらったりできる場所はまだまだ少ないのが現状です。そこで立ち上げたのが、産前産後ケア施設「Jicca(じっか)」です。
名前には、「実家のように安心して過ごしてほしい」という願いを込めました。施設では、助産師などの専門職スタッフが常駐し、育児相談だけでなく、休息や宿泊にも対応しています。
また、Jiccaでは生活環境の中で助産師から直接育児のノウハウを学べることも大きな特徴です。授乳や寝かしつけ、沐浴、赤ちゃんのお世話のコツなど、インターネットやSNSだけではわからないことも、その場で気軽に質問できます。初めての育児では、些細なことでも不安になるものです。でも、近くに専門家がいることで、「これで大丈夫なんだ」と安心できることも多いんです。
――利用者からは、どのような声が届いていますか?
「久しぶりにまとまって眠れました」「育児の不安が軽くなりました」などの声もいただいています。
私自身、産後のお母さんにとっては「眠いときに眠れること」と同じくらい、「安心して相談できること」も大切だと感じています。少しだけ肩の力を抜いて、自分自身を休ませる時間を持ってもらえたら嬉しいですね。

「助けて」と言える力も、子育てに必要な力
――今、子育てを頑張っているママたちに伝えたいことは何ですか?
子育て中は、「受援力」がとても大切だと思っています。
受援力とは、助けを求めたり、人に頼ったりする力のことです。「迷惑をかけてはいけない」「自分で頑張らなければいけない」という価値観を持って、頑張りすぎてしまうお母さんも少なくありません。
でも、子育ては本来、たくさんの人の手を借りながら行うものだと思います。頼ることは弱さではなく、自分と家族を守るための選択肢の一つ。「疲れた」「助けてほしい」と言えることも、子育てに必要な力の一つなのではないでしょうか。
私たち助産師も、いつでも頼ってもらえる存在でありたいと思っています。困ったときは、一人で抱え込まずに声を上げてください。その声を受け止めたいと思っている人が、きっといるはずです。

岸畑聖月さまのおすすめグッズ
(1)やわらかマット(アカチャンホンポ)
https://shop.akachan.jp/shop/g/g241397600/
助産師として商品開発に携わった、お風呂用のマットです。赤ちゃんを寝かせたまま両手を使って洗うことができるため、沐浴の負担をぐっと軽減できます。従来のようにお湯をためたベビーバスを使う必要がなく、泡で洗ってシャワーで流すだけなので、とてもスムーズ。お母さんの腰への負担も少なく、初めての沐浴に不安を感じている人にもおすすめです。
(2)m.i(ミィ)ヘアケアシリーズ
産前産後のママの悩みに寄り添って作られたヘアケアブランドです。私も開発に携わらせていただきましたが、特に「泡切れのよさ」にこだわりました。赤ちゃんから目を離せないお風呂時間でも、短時間で洗い流せるため負担が少なく、忙しい毎日の中でも使いやすいのが魅力です。赤ちゃんのお世話を優先しがちな産前産後だからこそ、ママ自身をいたわる時間にもつながると思います。
(プロフィール)
岸畑聖月
助産師/株式会社With Midwife 代表取締役
14歳の闘病経験をきっかけに助産師を志し、香川大学卒業後、京都大学大学院医学研究科に進学。総合病院で助産師として臨床経験を積みながら、2019年に株式会社With Midwifeを創業。女性活躍や健康経営を支える伴走型従業員支援プログラム「THE CARE」を展開し、ロート製薬や阪急阪神不動産などで導入。著書『働く親のためのサバイバルガイド』は重版され、全国の図書館でも所蔵されている。